自動車メーカーはグローバル化を推進し、日本メーカーも例外ではない。その結果、かつては当たり前のように存在した日本専売車は激減し、今では軽自動車と一部の車種に限定されている。
そのことに文句をつける気は毛頭ない。効率化を考えると当然の流れだろう。しかし、日本で発売された新型車が実は海外では数年前にデビューしていた、というケースが増えているのには疑問を抱かざるを得ない。
本企画では、最近新型車の日本導入が海外に比べて大幅に遅れている理由について、渡辺陽一郎氏が考察する。
文:渡辺陽一郎/写真:HONDA、SUBARU、NISSAN、奥隅圭之
【画像ギャラリー】全幅以外は王者クラウンと同じサイズの新型ホンダアコードは日本人の心をつかめるか!?
新型アコードの北米デビューは2年半前!!
2020年2月21日に、アコードがフルモデルチェンジを行ったが、これを新型と呼ぶには無理がある。このアコードは北米では2017年10月に発売されていたからだ。北米デビュー以降、日本では2年半も旧型を売り続けた。
レガシィは2019年7月に新型の生産を北米で開始したが、日本では今でも旧型を売っている。日本仕様は2019年9月に改良を受けたから、スバルの販売店では「しばらくフルモデルチェンジは行わず、現行型を売り続けるだろう」という。
ジュークは欧州では2019年9月に新型へフルモデルチェンジしたが、国内では旧型を売っている。日産の販売店では「ジュークの生産はすでに終了しており、在庫を売っている。
欧州で登場した新型ジュークは、日本では売られず、同様のコンパクトSUVとなるキックスを国内導入する。ただしキックスの発売時期はメーカーから聞いておらず、2020年6月以降になりそう」と説明した。
欧州で登場した新型ジュークは、直列3気筒1Lエンジンを搭載して、トランスミッションは6速MTと2組のクラッチを使う有段式7速ATだ。
従来のジュークとはメカニズムが大幅に異なるため、日本仕様に変更しやすい1.6LノーマルエンジンやCVT(無段変速AT)を搭載するキックスを導入する。ただしキックスの海外デビューは2016年だ。これを2020年に国内導入するのではタイミングが遅すぎる。
ホンダは海外から2年遅れで日本発売がスタンダード!?
このほか一度国内を見捨てて海外専用車に転向しながら、再び日本へ戻ってきた車種も日本導入が遅れた。
シビックは8代目を最後に一度国内販売を終えた。
9代目は国内では売られず、10代目のセダンを国内の寄居工場で生産することになり、これをきっかけに国内販売を復活させている。10代目シビックは海外では2015年に発売されたが、国内仕様の販売再開は2017年だから約2年間遅れた。
同じホンダのCR-Vも4代目で国内販売を一度終了した。この後5代目で復活したが、海外デビューは2016年で、国内発売は2018年だ。ここでも約2年遅れた。このほかジェイドも中国の発売は2013年、日本は2015年であった。
発売時期に差が生じる理由を開発者に尋ねると、「複数の国や地域で売られるクルマを世界同時に発売するのは難しい。そこで販売規模の大きな市場から、順番に発売していく」という。
事情は理解できるが、日本のユーザーから見れば、遅れるとしても数カ月が限度だろう。発売に2年以上も要すると、待ちくたびれて別のクルマに乗り替えてしまう。
新型登場後も旧型を売り続ける弊害
レガシィは、北米では2017年7月に新型へフルモデルチェンジしながら、日本仕様は2カ月後に改良を加えた。改良するとなれば、順番の遅れではすまない。腰を据えて「まだまだ旧型を売るぞ」という構えだ。
そして今の新型車は、フルモデルチェンジを行うと安全性能を幅広く向上させる。レガシィは新型になってプラットフォームが一新され、走行安定性や衝突安全性を高めた。ドライバーの疲労などを検知するドライバーモニタリングシステムも新たに採用している。
アコードも同様で、新型は新しいプラットフォームを採用した。走行安定性と乗り心地を向上させ、ボディの衝撃吸収構造も進歩している。
安全性の向上は、マイナーチェンジでは対応できず、フルモデルチェンジが必要なことも多い。そのためにフルモデルチェンジは進化が大きい。
また今は昔のように4年ごとのフルモデルチェンジは行われず、コストとの兼ね合いもあって、その周期は6~10年に長期化した。そうなるとフルモデルチェンジの進化がますます大きくなる。
新型の進化が著しいのに、海外で新型、国内で旧型を扱えば、日本のユーザーには海外よりも安全性の劣った危険なクルマを売ることになってしまう。
新旧モデルで安全性に差が付くなら、世界同時のフルモデルチェンジが無理でも、時間差を縮める努力はすべきだ。
フルモデルチェンジの周期が8年なのに、2年後に登場すれば相当な遅れだろう。8時間労働の職場で、2時間遅刻したのと同じだから、責められても仕方ない。
15%以下の小さな日本市場は二の次!?
特にアコードとレガシィは、長い歴史に支えられたホンダとスバルの基幹車種だ。日本のユーザーに愛用され、育てられ、世界で通用する商品に成長した。
「レガシィ」には伝承の意味があり、そのとおりのクルマにするなら国内市場は大切だ。旧型を売る時点でレガシィの本質を見失っている。
日本でアコードとレガシィのフルモデルチェンジが遅れた背景には、2つの理由がある。
まずは他社も含めて、日本車メーカーが海外市場を優先するようになったことだ。2019年にホンダが世界で生産した4輪車の内、日本国内で売られた比率は14%だった。
スバルは13%だ。両社とも世界生産台数の85%以上を海外で売り、日本は15%以下の小さな市場になったから軽く見られてしまう。
2つ目の理由は、この2車種がLサイズカーに肥大化して、日本で売りにくい商品になったことだ。それでも国内で2年間も旧型を売り続ける理由にはならない。
日本の事情を汲み取ることが重要
キックス、シビック、CR-Vは、アコードやレガシィのようなフルモデルチェンジの遅れではないから事情が異なる。
キックスは先に述べた通り、ジュークが海外向けの商品になったことで、国内導入が決まった。このタイミングがキックスのフルモデルチェンジ周期と合っていない。
シビックとCR-Vも、モデルサイクルの途中で導入されたから、発売時点で古さを感じた。
それならRAV4のように、海外で新型にフルモデルチェンジした直後(といっても約4カ月は遅れたが)に導入したほうが、先進性や新鮮味も残っているから日本でのイメージもいい。
発売時期も重要だ。
シビックの復活は、N-BOXのフルモデルチェンジ、先代フィット/シャトル/ステップワゴンのマイナーチェンジと時期が重なった。
販売店が多忙だったこともあり、伝統あるシビックを国内で復活させたのに、十分なインパクトを得られなかった。
CR-Vは「日本国内のSUVはコンパクトなヴェゼルで十分」と判断されて海外専用車になったが、その後にSUVの人気がさらに高まり、「オデッセイなど上級車種からの乗り替えはヴェゼルでは対応できない」という話になって復活した。
シビックも含めて、ホンダの対応は場当たり的だ。
たとえ日本が15%以下の市場になっても「オマケ」とは考えず、日本の事情を汲み取って新型車を発売する必要がある。そうしないと成功は望めない。
現行CR-Vも月販計画を1200台に設定して発売されたが、2019年の時点で1087台だから、早くも計画台数を割り込んだ。日本のメーカーなのだから、日本のユーザーと国内市場に、真剣に取り組んでほしい。
【画像ギャラリー】全幅以外は王者クラウンと同じサイズの新型ホンダアコードは日本人の心をつかめるか!?
"車" - Google ニュース
March 20, 2020 at 07:00AM
https://ift.tt/3baE7XH
【日本市場はもはや「おまけ」!?】新型車導入が海外より大幅に遅れる悲しき事情 | 自動車情報誌「ベストカー」 - ベストカーWeb
"車" - Google ニュース
https://ift.tt/2Xkidvp
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update
Bagikan Berita Ini
0 Response to "【日本市場はもはや「おまけ」!?】新型車導入が海外より大幅に遅れる悲しき事情 | 自動車情報誌「ベストカー」 - ベストカーWeb"
Post a Comment