ベンツGLA、アウディQ3が新型にフルモデルチェンジした。国産車ならマツダCX-30、レクサスUX、スバルXV、同じ欧州ならVW T-RocやボルボXC40などがライバルとなる、ミッドサイズSUVカテゴリーの2台。
SUVに限らず、輸入車の購入を考える際いつもアタマに浮かぶのは「国産車にくらべて100万円から200万円以上も高い輸入車を買うだけの価値はあるのか?」ということ。自動車評論家 鈴木直也氏に、深堀り・競合するモデルたちとともに採点してもらった。さらにベンツGLBもレビュー!
【画像ギャラリー】全40枚の画像でGLA・GLB・Q3、競合するミッドサイズSUVや相関図・採点表をチェック!!!
※本稿は2020年11月のものです
文/鈴木直也、ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部、撮影/平野 学
初出:『ベストカー』 2020年12月10日号
■まずは競合となる日欧9台を比較!!!
ミッドサイズSUVのベンツGLAが2代目にモデルチェンジした。これに相前後して、やはり2代目に進化したアウディQ3も待望の日本上陸を果たした。
今年はVW T-Rocも導入されるなど、欧州のミッドサイズSUVが日本で注目度を高めている。
全長4500mm前後の“ちょうどいい”サイズのこのクラス、日本車だったらマツダCX-30、レクサスUX、スバルXVなどがちょうど当てはまる。
欧州ミッドサイズSUVの価格は500万円前後なのに対し、国産勢は300万~400万円前後で、200万円程度の価格差がある。500万円だったら、ハリアーやCR-Vの上級グレードにも手が届く。
……、となると、ユーザーとしては悩みが深くなる。
欧州ミッドサイズSUVにするか!? だとしたら、その魅力はどこにあるのか!?
最新のベンツGLA、アウディQ3を試しながら、そのミッドサイズSUVの徹底チェックを行っていくことにしよう。
●日欧注目ミッドサイズSUVを相関図でチェック
図に示すように、ベンツGLAやアウディQ3などは全長4500mm以下のカテゴリー。
サイズ的には国産勢ならCX-30やレクサスUX、スバルXVなどがガチンコライバルとなるのだが、欧州勢の価格は500万円級。
一方、価格的な競合となると、国産勢だとハリアーやCR-Vといったひとクラス大きなSUVの上級グレードが買える価格帯。
サイズで見るか、価格で比べるか!?
■ここまでを踏まえて……ベンツGLA・アウディQ3ってどんなクルマ? 魅力はどこ?
(TEXT/鈴木直也)
最近の売れ筋は世界共通でSUVだから、輸入車のニューモデルもここを攻めてくるクルマが多い。おなじみドイツ御三家では、メルセデスがGLA、GLBを立て続けにモデルチェンジ。VW/アウディもT-Roc、Q3が新しくなった。
ふだんはあんまり“ガイシャ”紹介には熱心ではない本誌ベストカーだが、このへんはきちんとチェックしておかないとイカン。そんなわけで、GLA、GLB、Q3の3台を連ねて、ちょっくらテストドライブに出かけてみた。
まずはこの3台の概要を軽くおさらいすると、GLAは6年ぶりにモデルチェンジしたこの車名としての2代目。Aクラスが新たに採用した「MFA2プラットフォーム」がベースで、これはGLBとも共通だ。
特徴的なのは、全高が先代GLAより10cm以上高くなり、最低地上高も200mmを確保するなどSUV色が強まったこと。今回持ってきたのは150ps/32.6kgmを発揮する2Lディーゼルターボの4WD仕様(GLA200d 4MATIC)だ。
いっぽう、GLBはこの車名を冠した初代。前述のとおりプラットフォームやパワートレーンはGLAと共通だが、ホイールベースを100mm延長して3列目シートを設置しているのが最大の特徴だ。
Aピラーを立ち気味にしたボクシーなプロポーションは、ちょっとGクラスを彷彿させる雰囲気があり、200mmを確保した最低地上高により悪路走破性も高い。今回持ってきたのはGLAと同じ2Lディーゼルながら2WD仕様(GLB200d)だ。
メルセデス軍団に対抗するアウディQ3も今年7月に日本デビューしたばかりのニューモデルだ。燃費計測ルールの変更やコロナ禍などで本国デビューから2年遅れとなったが、CセグSUVのベストセラーとしてその存在感は別格。
今回のモデルから派生型クーペのQ3スポーツバックも追加され、売れゆきトップを死守する決意がうかがえる。
今回のモデルチェンジは基本的に正常進化といっていい。前モデルよりホイールベースを75mm延長した「MQBプラットフォーム」の上に、アウディの新しいファミリーフェイスであるオクタゴン(8角形)グリルを採用したスタイリッシュなボディを載せたもの。
今回持ってきたグレードは、150ps/34.7kgmを発揮する2Lディーゼル搭載の4WD仕様(Q3 35 TDIクワトロ)だ。
この3台、それぞれ「さすが欧州プレミアム!」と感心する魅力は大いにある。
例えば、最近のメルセデスに乗るといつも感心するのがIT系機能の充実ぶりだが、それはこのGLA/GLBでも上位クラスと遜色がない。
すでにお馴染みとなった「ハーイ! メルセデス」で呼び出すMBUXをはじめ、ACCやLKAなどの運転支援システム、衝突防止ブレーキシステムなどADAS系まで、一部有償オプションながら多彩な装備はトップクラス。
全面液晶のキラキラ系インパネと相まって、先進イメージではライバルをリードしていると評価できる。
また、アウディQ3については上質な走りへのこだわりが相変わらずで、操舵フィール、サスペンションの動き、ボディ上屋の動きの制御など、すべての動きにソリッド感を基調とした統一感がある。
外観はアウディの持ち味である精密感を表現したクールなテイストだし、内装も端正な仕立てのオーソドックス派。ビシッと確立したブランドアイデンティティには一分のスキもない。
●価格に見合った魅力はあるのか?
しかし、われわれ庶民にとって問題なのは、そのために500万円を支払う覚悟がありますか、という点だ。
国産同クラスのCセグSUVというと、マツダCX-30、レクサスUX、スバルXVなどがすぐ思いつくライバル。価格はレクサスUXをのぞけばほぼ300万~350万円ほどで、それぞれみんな「いいクルマ」と胸を張って評価できる優等生ぞろいだ。
また、国産で500万円クラスの予算が組めるなら、ハリアーハイブリッドやCR-Vハイブリッドの上級モデルが余裕で買えるし、RAV4ならPHVに手が届く。
今欧州車が血眼で取り組んでいるCO2排出量95g/km対策という面で見ても、国産ハイブリッドならそれをクリアした燃費性能が手に入るというわけだ。
それでも、ひと昔前なら「やっぱり欧州プレミアムでないと味わえない魅力があるから!」と素直に言えたのだが、最近の欧州車(主にドイツ車)は厳しいCO2排出量規制への対応やEVへの巨額投資などが重荷となって、とりわけエントリークラスの質的低下が無視できなくなってきている。
例えば、今回の3台は奇しくもすべてミッションがDCTだったが、渋滞時のドライブフィールは誉められたものではないし、エンジンについてもアウディのEA288型は例のディーゼル不正事件以来、ガチガチの排ガス規制優先チューンで(当たり前だけど)、走りの爽快感がちょっと物足りない印象がある。
率直に言えば、1000万円級のプレミアムはまだまだ別格ながら、500万円級だと欧州プレミアムも安泰ではない。
コスパはもちろん、ガチの実力でも日本車に激しく追い上げられていると言わざるを得ないのが現状だ。
個人的な好みで選ばせていただけるなら、今500万円クラスのSUVを買うとしたら、欧州車ならボルボXC40B4 AWD、日本車ならRAV4 PHVがぼくのチョイス。
総合的な商品力という意味では、この2車がこのセグメントのトップを走っていると思うな。
■ベンツGLBってどんなクルマ⁉
3列7人乗りのSUVというと、日本車ではCX-8をすぐ思い浮かべるが、輸入車として初めてその市場に斬り込んできたのがメルセデスGLBだ。
クルマの成り立ちとしては、先行デビューしていたGLAのホイールベースを100mm延長して3列目シートを増設したパッケージングで、プラットフォームやパワートレーンはGLAと共通。ゆえに、乗る前は「たぶんGLAと大差ない乗り味なんでしょ……」と予想していた。
ところが、実際に試乗してみると、両車のドライブフィールは意外なほど異なる性格づけが与えられているのにビックリ。
ひと言で言うと、GLAはややゴツゴツしたSUVっぽいシャシーセッティングで、8速DCTの変速フィールもスパッとした切れ味重視。
ゆったり走るには洗練度がイマイチだが、飛ばすと俄然活気づくというやんちゃな性格が与えられている。
いっぽうGLBの方は対照的に全体の乗り味が穏やかで、サスペンションの当たりはソフトだしDCTの変速フィールも「ひょっとしてステップATか?」と勘違いほどスムーズ。
同じエンジン/プラットフォームながら、3列シートから連想されるファミリーユースが強く意識されているのだ。
細かいことを言えば、3列目シートへの乗降性など、使い勝手の面でこなれていない部分はあるのだが、ぼくの予想以上に最近のメルセデスのクルマ造りが“マーケットイン”だったということ。
市場さえあれば、メルセデスが日本車みたいなミニバンを造る可能性だって大いにあると思う。
かつてのメルセデスは「最善か無か」のキャッチフレーズでわかるとおり、庶民のニーズに迎合するような自動車メーカーではなかった。
それが、今やファミリー向けのSUVだってちゃんとこしらえてくれるフレンドリーな会社になったというわけです。
メルセデスを神のような存在と思っていたオールドマニアには一抹の寂しさはあるけれど、これも時代の流れ。われわれユーザーも、気負わず気軽にメルセデスと付き合ってゆくべきなんでしょうねぇ。
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December 16, 2020 at 09:00AM
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