
ミャンマー北部カチン州で、急拡大するバナナ農園に地元の人々から反対の声が高まっている。実質的に農園を運営するのは中国企業。土壌や水の汚染、住民の健康被害が報告されているなかで、ミャンマー政府の対応は――。(カチン州ワインモー=染田屋竜太)
農薬の時期、痛む全身
3~4メートルほどの高さのバナナの木が生い茂る。濃緑の大きな葉に遮られ、昼なのに暗い。まだ緑色のバナナには傷やシミがつかないように白いビニールカバーがつけられていた。カチン州ワインモーでは至るところにバナナ農園が広がっている。
ただ、働き手を取り巻く環境は過酷なようだ。2年間、農園で殺虫や除草などの仕事をしているタンラーさん(38)は、農薬や殺虫剤をまく時期に毎日のように、体全体に焼けるような痛みを覚える。毎日午前6時から12時間働き、賃金は夫と合わせて月16万チャット(約1万2700円)。昨年出産した男児の腹からは腫瘍(しゅよう)が見つかった。「農薬との関係はわからないが、家族全員の体がむしばまれている気がする」
カチン州の環境保護団体のブランアウンさんは「バナナ農園では大量の農薬や化学肥料が使われ、住民は日常的に汚染された水を飲み、農作業で体を壊す人もいる」と訴える。地元住民団体による調査では、農園近くの小川の水を飲んだ水牛が次々と死んだり、魚の数が減ったりといった影響が確認されている。住民と環境保護団体が協力して州政府に訴えているが、ブランアウンさんは「役人は面会すら拒み、我々の意見を聴こうとしない」とため息をつく。
収穫されたバナナはほぼ全てが…
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