キャンピングカーの人気は相変わらずですが、乗用車全般の市場は、軽自動車を除いて厳しい状況が続いています。そんな背景からか、一部の自動車メーカーから「車中泊」を意識したモデルが登場しはじめました。
(TOP画像:日産セレナ「 マルチベッド」。外観は通常と変わりはない=提供(株)オーテックジャパン)
オプションではなく「純正」特別仕様車が!
これまでも、既存車種のオプション品にベッドマットやカーテンなど、車中泊グッズが設定されていることはありました。が、あくまでもオプションはオプション。販売されている車に変更はありませんでした。ところが最近、車中泊を意識した「特別仕様車」が出はじめているのです。
最近登場したのは以下の2車種。
・日産セレナの「マルチベッド」
・トヨタのミニバン、ノア/ヴォクシー/エスクァイアをベースにしたコンプリートカー「マルチユーティリティ(MU)」
いずれも特別仕様車という位置づけで、一般に販売されているものとは車自体が違うところが特徴です。
日産セレナもトヨタのノア、ヴォクシー、エスクァイアも、いわゆるミニバンというカテゴリー。3列シートをもち、乗車定員はいずれも7~8名。キャンピングカービルダーの中にはこれらの車種をベースにした車中泊車を作っているところもありますが、いよいよ自動車メーカーが車中泊を意識しはじめたということでしょう。

日産セレナ「マルチベッド」。2WD(FF)のe-power×2Lガソリンタイプと、4WD(フルタイム)の2Lガソリンタイプがある=提供(株)オーテックジャパン
では、「マルチベッド」「MU」は、キャンピングカービルダーが作った車とどこが違うのでしょうか? 気になる点をチェックしてみましょう。
●3列目を取り去りベッドスペースを確保
ベースになった車はミニバンですから、セダンやハッチバックと比較して広い室内空間があります。さらに両車種とも「フルフラットモード」などという名称で、シートを倒せば「くつろげる」とうたっていました。ですが、シートの形状を見ても、キャンピングカーのような「本当のフルフラット」=完全に平滑な連続した面、というわけにはいきませんでした。
そこで、両車種とも特徴でもある3列目シートを取り去り、車内に大きなスペースを確保。そこへ、フラットなボードやマットを設置して、平らな就寝部と収納スペースを設けよう、という設計です。

日産セレナ「マルチベッド」のハッチバックをオープンしたところ。3列目シートをなくし、床はカーペットではなく水に強いロンリューム仕上げ。遊び道具も気にせずガンガン積めるのもうれしい=画像提供(株)オーテックジャパン
●天井はやや低め
バンコンにみられるようなポップアップルーフなどは架装していません。大人が車内で立てるだけの天井高もありません。(キャンピングカー登録=特種車両〈8ナンバー〉登録のためにはキッチン前の天井高160cm以上が必要)
●炊事はできない
キッチンの設備はありません。(キャンピングカー登録のためには炊事装置が必要)
少なくとも天井高や炊事装備が適合しないため、これらの車両をキャンピングカー登録はできません。いずれも5ナンバーもしくは3ナンバー登録ということになります。

日産セレナ「マルチベッド」のベッド展開を後ろから見たところ。2列目シートからフラットなベッドマットになるので、大人2人+子供1人程度のスペースが確保できる=画像提供(株)オーテックジャパン
値段をとるか、装備をとるか
キャンピングカーとの違いを簡単に整理しましたが、「寝るだけでいいなら、自動車メーカー製で十分では?」「キッチンは使わないし……」という人もいらっしゃるでしょう。
では、この「メーカー純正車中泊車」のメリットとデメリットは何でしょうか。
【メリット】
●日本全国のディーラーで注文できる
いずれも、トヨタ、日産のディーラーで扱っている車種ですので、全国どこで注文してもOK。もちろん、全国のディーラーでメンテナンスなども受けられます。
●価格が安い
装備がシンプルなので、比較的リーズナブルな値段付けがされています。

トヨタVOXY「MU」。VOXYのほかNOHA、エスクワイアにも設定がある。2Lガソリンの2WD(FF)と4WDがあるが、ハイブリッドにはMUの設定がない=画像提供トヨタカスタマイジング&ディベロップメント
【デメリット】
●電装類がない
フラットに就寝できるスペースを作っただけで、サブバッテリーもありません。照明などの電気はメインバッテリーからの供給なので、容量面でもやや不安です。また、FFヒーターはオプションでも用意されていません。
●断熱処理されていない
車内レイアウトに変更はあるものの、車体は通常の市販車のまま。そのため、キャンピングカーのような断熱処理はされていません。真夏にエンジンもエアコンも止めて炎天下にしばらく置くと、車内がどんな暑さになるか、経験のある方もいらっしゃるでしょう。寒さについても同様です。通常の乗用車は、外気温の影響をダイレクトに受けてしまうのです。
要するに、「値段」をとるか「装備」をとるかの二択。そういってしまえばそれまでですが、大切なことは、①自分なりの使い方をよく考え、②そのために必要な装備を想定し、③自分が要求する装備があるのかどうか、で判断することです。
そう考えると、常日頃キャンピングカービルダー製の車を見慣れた目から見て、自動車メーカー製の車中泊車両の「中途半端感」はぬぐえません。

トヨタVOXY「MU」のリアスペース。3列目シートをなくし、フラットな床は明るい木目調ロンリューム仕上げ。シートも防水仕様だ=画像提供トヨタカスタマイジング&ディベロップメント
キャンピングカーの裾野を広げる可能性も
それでも、自動車メーカーが直接「車中泊車」に乗り出してきたことは、歓迎すべき動きだと思います。
いまや自動車に『夢』を抱く人は少ない時代です。私の若いころには「いつか乗りたい」と憧れる車種があったり、速さを競ったり(もちろんサーキットで!)、運転技術を磨いたり、テクニカルな面を研究したり……と車に対する夢がありました。車との付き合いには一定の文化があったような気がします。
そんな文化も薄れたいま、こうした車中泊仕様の車両がメーカーから提案されることには大きな意味があるといえるでしょう。
また、自動車メーカーのWebページに掲載されたり、自動車ディーラーにカタログが置かれたりすれば、今までキャンピングカーとあまり接点がなかった人にも身近に感じてもらえるでしょう。

トヨタVOXY「MU」のベッド展開時。2列目シート+マルチユースボードでベッドになる。フラット面は荷室部分だけなので、サイズ的にはやや不満が残る=画像提供トヨタカスタマイジング&ディベロップメント
これまでに販売会社や関連会社がキャンピングカーを製作したり、販売会社がキャンピングカービルダーのOEM車両を販売してきたりした例はありますが、自動車メーカーが直接キャンピングカーを作ることはありませんでした。そんな中での今回のニュース。地味に見えて、なかなかに歴史的な話題といえそうです。
今回の2車種の動向によっては、追従するメーカーも出てくるかもしれません。車中泊を楽しむ人口が増えることは、日本の余暇をより豊かに、多彩にします。「車中泊できる場所が増える」「車中泊に便利なグッズが増える」といった変化が起きて周辺が盛り上がれば、もっと多彩な車両が出てくるようになるかもしれません。
日本の余暇はもっと楽しくなります。それはすでにキャンピングカーを持っている必要ユーザーにとっても、歓迎すべきことだと思うのです。
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