俗に「ライバルカー」と呼ばれるクルマたちや、同じモデルでも近接するグレードは、いざ買うぞ! と心を決めたときの一番の悩みどころかもしれない。
ヤリスとフィット(発売日まで近いときた)。RAV4の2.0Lガソリンと2.5Lハイブリッド。はたまた、ロッキーとクロスビーなら? シエンタとフリードはどうだ?
そんなライバルカー11組の購入の決め手を、死ぬほど悩んで失敗も重ねてきた(!?)自動車評論家4名が解説。
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※本稿は2019年11月のものです
判定人:国沢光宏、渡辺陽一郎、清水草一、木下隆之/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年12月26日号
■ROUND 01/トヨタ 新型ヤリス VS ホンダ 新型フィット

VS

●悩んで当然、日本を代表するコンパクト対決。どっちを選ぶべき!?
〈判定人/渡辺陽一郎〉
フィットは従来型と同様、燃料タンクを前席の下に搭載する。全高を立体駐車場が使える数値に抑えたコンパクトなボディだが、空間効率が優れ、車内も広い。
後席の頭上と足元に充分な余裕があり、大人4名が快適に乗車できる。後席を畳めばボックス状の広い荷室に変更できる。
ヤリスは従来型のヴィッツに比べて、後席の足元空間が狭くなった。走りとボディスタイルを重視する。
したがって内装の質、走行安定性、操舵感はヤリスが勝る。後席と荷室を重視しないユーザーにはヤリスを推奨するが、実用性まで含めた総合性能はフィットが優れている。
◎結論!
走りを重視するならヤリスだが、総合性能で評価するならバランスのいいフィット!
■ROUND 02/ホンダ フリード(MC後) VS トヨタ シエンタ

VS

●若いファミリー層に人気のコンパクトミニバン。ドチラを選べば幸せ?
〈判定人/渡辺陽一郎〉
シエンタは薄型燃料タンクの採用で3列目シートの床も低く抑えた。床と座面の間隔を相応に確保したから、膝が大きく持ち上がる座り方にならない。
全高は1700mm以下だが、6名乗車でもさほど窮屈ではない。
フリードは床が少し高く、3列目に座ると膝が持ち上がりやすい。全高もシエンタを上まわり、操舵感は腰高だ。
シエンタはワゴン風のミニバンに仕上げて個性的だが、フリードはミニバンらしさを追求しながら、少し中途半端。
天井をさらに50mmほど高めて、3列目の着座位置を持ち上げるとメリットが際立つ。よってシエンタの勝ちだ。
◎結論!
3列目乗員にも窮屈感を感じさせないシエンタを選んだほうが幸せになれる、のかもしれない……。
■ROUND 03/トヨタRAV4 2.0LガソリンVS トヨタRAV4 2.5Lハイブリッド

●ガソリンもハイブリッドもあるRAV4。金があるならドチラを選ぶべき?
〈判定人/国沢光宏〉
この問題、金額や燃費もさることながら個人的に「けっこう違いますね!」と感じるのが絶対的な動力性能だ。
ハイブリッドの場合、2.5Lエンジン+モーターから引き出せる最高出力は219ps! 2Lガソリン車の171psより20%程度パワフル。しかもアクセルレスポンスやトルクバンドもハイブリッドのほうが優位。乗り比べたら明らかに速いです。もし予算に余裕あるなら、この一点だけでハイブリッドを選ぶ。
ここまで読んで「ガソリンエンジン車に設定されているトルクベクタリング4WDが欲しい」と思う人もいるだろう。
確かに優れた4WDシステムながら、雪道を走ってみるとハイブリッドだって相当曲がる。むしろ雪道を全開走行したら、パワーで勝るハイブリッドのほうが速いほど。改めて説明するまでもなく実用燃費は2倍近い。
先日ジックリ乗ったら、普通に走って20km/Lくらい走ってくれた。大いに魅力的です。
◎結論!
パワーに勝るハイブリッド。4WD性能もなかなか。予算が潤沢ならば、やっぱりハイブリッドを買うべし!
■ROUND 04/マツダ CX-30 SKYACTIV-G 2.0 VS マツダ CX-30 SKYACTIV-D 1.8

●マツダの「伝家の宝刀」ディーゼルか。それとも軽快な走りのガソリンか
〈判定人/松田秀士〉
ディーゼルエンジンの魅力は力強い加速、そしてメカニズムの凄さです。燃料、めっちゃ圧力上げて送ります。
そのおかげでピエゾインジェクターとか、1回の燃焼に6回くらい燃料を吹くなど、信じられないような制御をしている。
凄いんです、クリーンディーゼルのメカニズムは。しかもマツダは尿素SCRを使わないでクリーンな排気を実現している。これは凄い!
さらに燃費がよく経済的。「いやぁ、やっぱりCX-30はクリーンディーゼルでしょ」と言いたいのですが、ボクはガソリンエンジンを推します。
理由は、高速での室内静粛性がガソリンのほうが高いのです。最近のマツダ車はオーディオの音がいい。CX-30にダウンロードした曲なら、早送りや巻き戻しも自在。こんなオーディオ操作できなかったんです、これまで。
そんなオーディオを楽しむためにも、ノイズの少ないガソリンを選びます。ガソリンエンジンですよCX-30は!
◎結論!
ディーゼルの力強い加速は魅力だが、静粛性の高さで、ガソリンエンジンを推します!
■ROUND 05/トヨタ カローラセダン VS トヨタ プリウス

VS

●ともに同じパワーユニットを積むハイブリッドセダン!!! 買って満足なのはどっちだ?
〈判定人/清水 草一〉
今買うならカローラセダン! やっぱり最新モデルだけに、「TNGA」のセッティングが熟成されていて、カローラのほうが乗り味が一段上質なんだよね。プリウスも近いうち追いつくだろうけど、それをおいてもデザインとパッケージングも、カローラのほうが昭和人間のココロに刺さるものがある。
これは単に世代の問題でもあるけれど、カローラセダンの凝縮感のあるセダンフォルムは、“街の遊撃手”ジェミニあたりを彷彿とさせて、どうにも惹かれてしまうのですよ! それも黒のカローラセダンに! ホイールも黒(ガンメタ?)ね! そこまでギチギチに指定してカローラセダンが欲しい!
現行プリウスもいいクルマで、攻めたデザインも好きだったんだけど、マイチェンで攻めを緩めたのが引っかかる。カローラセダンは日本向けにダウンサイジングしていながら、よくぞここまでデザインをまとめてくれました。
◎結論!
TNGAのセッティングが熟成され、より上質な乗り味のカローラセダンハイブリッドでキマリ!
■ROUND 06/ダイハツ ロッキー VS スズキ クロスビー

VS

●ともに扱いやすい5ナンバーサイズSUV。オススメはどっちだ!?
〈判定人/渡辺 陽一郎〉
両車とも全長が4m以下のコンパクトSUVで、エンジンは直列3気筒1Lターボを搭載する。共通点は多いが、クルマの性格は異なる。
ロッキーの外観はオフロードSUVの性格が強く、クロスビーは全高が1700mmを超えて空間効率が高い。
身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先空間は、ロッキーは握りコブシひとつ半だが、クロスビーはふたつ半を確保する。
そうなるとロッキーは、悪路走破力を高めるSUVの機能を充実すべきだが、キャストアクティバにも採用されるグリップサポート制御、ダウンヒルアシストコントロールを備えていない。
クロスビーは同様の機能を採用した。最低地上高はロッキーが185mm、クロスビーは180mmでほぼ同じだ。
ロッキーの外観はRAV4風でカッコイイが、実用性を比べると、車内が広くSUVの機能も充実させたクロスビーが勝っている。
◎結論!
空間効率のみならず、SUVとしての装備も充実するクロスビーに軍配! ロッキーのスタイルは魅力的なんだけど……。
■ROUND 07/トヨタ グランエース VS トヨタ アルファード

VS

●セレブを乗せる豪華ミニバンの両雄。買って後悔しないのはドッチ?
〈判定人/渡辺陽一郎〉
グランエースには4列シートの8人乗りもあるが、選ぶ価値が高いのは3列の6人乗りだ。
2/3列目には、アルファードのエグゼクティブパワーシートと同様の豪華な座席を装着する。アルファードの場合、2列目は快適でも3列目は折り畳みが可能で座り心地はかなり下がる。
よって快適に移動できるのは4名までだが、グランエースなら3列目も2列目と同様の造りなので6名が快適に乗車できる。
その半面、グランエースで折り畳みの可能なシートは、8人乗りの4列目だけだ。3列の6人乗りは畳めないから、自転車のような大きな荷物も積みにくい。
価格は直列4気筒2.8Lクリーンディーゼルターボの搭載で600万円を超えるから、機能と価格のバランスではアルファードが買い得だ。
◎結論!
3列目の乗員まで快適なのは凄いが、機能と価格のバランスでアルファード!
■ROUND 08/ルノー メガーヌR.S.トロフィー VS ホンダ シビック タイプR

VS

●ニュルFF最速をかけて争う超っ速ハッチバックの2台。買うならドッチ?
〈判定人/木下 隆之〉
ベストカー編集部も悩ましい質問を突きつけてきますね。というのも、シビックタイプRとメガーヌR.S.トロフィーは、志も性能も近似しているからだ。
その象徴が、ニュルブルクリンクでのFF最速をかけたバトルであろう。シビックタイプRが7分43秒の記録を出せば、ルノーはトロフィーの軽量版であるトロフィーRで7分40秒のタイムを叩き出す。
エンジンはシビックが2Lターボで320ps、メガーヌR.S.トロフィーが1.8Lターボで300psだ。
いずれ劣らぬ性能を誇るこの2台。どちらを選ぶべきか。
僕はシビックタイプRを推薦しようと思う。
というのは、メガーヌR.S.は獰猛さが抑えられ、乗り手を選ばないのに対してシビックは激しい。言葉を変えれば、刺激に満ちあふれているのだ。
どうせ激辛マシンを選ぶなら、より激しいほうが満足感は高いだろう。なのでシビックタイプRをお薦めする。
◎結論!
刺激に満ちたシビックタイプRで大満足。ただ、そろそろ生産終了なのでご注意を(いずれ復活しますけど)!
■ROUND 09/日産 スカイライン400R VS トヨタ スープラRZ

VS

●キャラは違えど、同じ3Lターボ&AT同士。迷うっちゃー、迷う?
〈判定人/木下 隆之〉
まったくキャラが違うからなぁ。迷う対象じゃない。できれば、スカイライン400RとスープラRZの複数所有が理想的だ。だが、あえて選ぶとするのなら、400Rをオススメしたい。
なぜならば、スープラはいわば古典的なフィーリングである。限界域の挙動が神経質であり、コントロールを楽しむのも難しい。せっかくのFRスポーツなのに、その領域では背を向ける。本末転倒だ。
一方の400Rは、極めて現代的に整っている。パワー感は充分だし、そのパワーを持て余すことがない。楽しめる。理に適っている。乗り手を選ばないからね。
◎結論!
限界域の挙動が神経質なスープラより、パワーを持て余さない400Rをオススメする!
■ROUND 10/トヨタ スープラSZ VS トヨタ 86GR

VS

●実は価格も意外に近い2LFRスポーツ同士対決! 迷って当然?
〈判定人/国沢光宏〉
普通のクルマ好きから相談されたら瞬時も迷うことなく「スープラ」と答える。
86GR、とってもよいクルマながら「付加価値分」のコスパに普遍性なし。つまり86大好きな人なら内容的に納得できる金額だろうけれど、そうじゃなければ理解できない、ということであります。
絶対的なパフォーマンスだってベースになった86から“ほぼ”進化していない。お金に余裕あり、なおかつ味のよさを追求したい人向けです。
スープラSZは誰でもわかるコスパだ。BMWの2Lターボ積んだスポーツモデルが500万円切りで買えるならお買い得感すらあります。
◎結論!
86が大好きなら86GRもありだけど、普通に考えるとスープラSZがオススメです。
■ROUND 11/レクサス LS(MC後) VS ベンツ Sクラス

VS

●マイナーチェンジで乗り味が向上したレクサスLSはSクラスに勝てるか?
〈判定人/清水草一〉
これはメルセデスSクラスだすね。それも直6ディーゼル搭載のS400diお値段は後輪駆動なら1215万円と意外と高くない。値引きを含めるとヘタすりゃLSより安いかも。
そのうえで、メルセデスの直6ディーゼルは珠玉の内燃機関だ。とろけるようなスムーズネスとあふれ出るトルク。そして驚くべき低燃費!
まさに「どこまででも走って行ける」感満点! 後席でふんぞり返るのもいいけど、ぜひステアリングを握りたい。
レクサスLSもマイチェンで素晴らしくいいクルマになったけど、自分も運転するなら、やっぱりSクラスかな。
◎結論!
LSも素晴らしくよくなった。でもSクラスは自分で運転してもイイ。ベンツの壁は高いのだ。
* * *
以上、最近登場したモデルを中心に沸き上がる「二者択一」問題に答えを出してみた。おそらく読者の皆様の悩みもスッキリ解消したことであろう。
もし、「オレの二者択一は違うんだよォォォ」という方がいたら、ぜひ声を上げてほしい。次回で扱うことができるかもしれない。
【番外編】予算600万円の中古車選び。後悔しないのはR35GT-R? それとも第2世代GT-R?
(TEXT/萩原文博)
「GT-R」と聞けば、その時代を代表する国産車最高のポテンシャルを持つスポーツカーと答えるはず。そこで予算600万円の中古車を選ぶならばR35GT-Rと第2世代GT-Rどちらがベターなのかを検証したい。

VS

600万円以下の中古車は第2世代GT-Rの流通台数が約96台、価格帯は約249万~となるがR34は圏外だった。一方のR35GT-Rは流通台数が57台と少なめだが、価格帯は約398万~で、2009年式までが中心だ。
◎結論!
プレミアム価格の第2世代よりも、新車で800万円以上したR35型を半額近い価格で手に入れてチューニングして楽しむほうがベターといえるだろう。
●【画像ギャラリー】悩むのもまた愉し…11対決のラインナップをギャラリーでチェック!!
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December 26, 2019 at 05:00PM
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