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【オピニオン】自動運転車、目的地到着は10年後 - ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

アルファベット傘下ウェイモの車両 Photo: Paul Sancya/Associated Press

――筆者のアンディ・ケスラーは「インサイドビュー」欄担当コラムニスト

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 筆者は最近、自動運転車に乗る機会を得た。とてもクールな体験で、1台欲しくなった。2005年10月に国防高等研究計画局(DARPA)が主催したロボットカー・レース「グランドチャレンジ」でスタンフォード大学チームの車が132マイル(約212キロ)を走破して優勝賞金200万ドル(約2億1900万円)を獲得して以来、自動運転の夢は熱を帯びてきた。

 車があなたをレストランで降ろしてくれて、食事中は駐車場で待っていてくれる。車中でのんびり過ごせる通勤。大言壮語で知られるイーロン・マスク氏は、2020年までにテスラのロボットタクシーが100万台走るようになるとしている。米国の自動車事故による年間の死者数は約4万人に上るが、それがほぼゼロになるという。筆者の頭の中では「まだそこに着かないの?」という言葉がこだまする。残念ながら、もう少し我慢が必要だ。

 ここ数年、自動運転は現実的になり、そしていくつかの障害にぶつかった。ゼネラルモーターズ(GM)の自動運転車開発部門クルーズは今年、サンフランシスコで自動運転タクシーを開始する計画だった。しかし実現しなかった。ダイムラーは最近、2021年までに1万台のロボタクシーを生産するという計画の「現実に目覚めた」。フォルクスワーゲン(VW)と共同研究を行っているフォードのジム・ハケット最高経営責任者(CEO)は4月、「われわれは自動運転車の到来を過大評価していた」と述べた。自動運転に過剰な期待を持つ時期は過ぎた。今は、十分な経済合理性を持てる水準まで自動運転車の価格が下がるのを待つ時だ。

 アルファベット傘下のウェイモは、クライスラーのハイブリッド・ミニバン「パシフィカ」を使って自動運転をテストしている。この車の上部には周囲の状況を測定するセンサー「LiDAR(ライダー)」が搭載されている。このセンサーは車本体よりも値段が高い。さらに、色を区別するイメージセンサーと緊急車両を聞き分ける音声センサーも搭載している。雪や雨、霧を見通すためのレーダーも複数ある。車体の前方と後方には、カーブや歩行者を発見するための短距離LiDARが6個付いている。

 だが車間を縫うように走るオートバイには混乱をきたす。特に後方から急速に近づいてくる場合はそうだ。センサーはそれが自転車か人間か動物なのかを区別できない。ちなみに、ウェイモの次世代車はジャガーの電気自動車「I-Pace」になる。

 これは財布の薄いプレーヤーが参加できるゲームではない。ウーバーは自動運転の取り組みで1億2500万ドルを失った。前四半期のみでだ。シリコンバレーでは、見るからに高そうなセンサーを積んだアップルの自動運転車も見かける。ウェイモのミニバンは少なく見積もって20万ドルはするだろう。今のところカリフォルニア州マウンテンビューで50台、アリゾナ州フェニックス郊外で150台が走っている。フェニックス郊外では、アルファベットは配車サービス大手のリフトと組んでいる

 ウェイモは全ての道路の隅々まで入念にデータを集めている。グーグルマップのデータだけでは不十分だ。車両が車線中央を保てるよう、複数のセンサーが道路の幅を注意深く測定する。縁石の高さも計測対象だ。3車線のハイウェーを記録するため、テスト車のドライバーはまず1車線を走行し、それから残りの2車線を走る。そしてウェイモの車両は速度制限をきっちり守っている。筆者には無理だ。

 自動運転初期の死亡事故には多くの戒めがあった。昨年起きた1件の事故では、テスラの運転支援機能「オートパイロット」が色のあせた車線境界線を誤認識し、中央分離帯に衝突した。だからこそ詳細な地図が決定的に重要なのだ。ウーバーの自動運転車は事故の履歴がある。昨年に起きた死亡事故について調査員は、センサーが「交通規則を無視して道路を横断する人を想定していなかった」ことが原因だとしている。システムは衝突の5.6秒前に被害者を「他の物体」と認識していたが、事故回避の方策は何ら講じられなかった。

 データこそが王様だ。テスラは自動運転車の1台1台からGPSと画像データを集めている。これは大きなアドバンテージだ。そうして集めたデータを彼らの人工知能(AI)システムに投入できるからだ。しかしテスラの車両はレーダーとカメラしか搭載しておらず、LiDARはない。しかもウェイモに比べて地図の範囲は大幅に少ない。

 自動車業界団体SAEインターナショナルは、自動運転レベルの基準を設けている。レベル3は自動運転と見なされるが、ドライバーは一定の状況下で運転操作を行う必要がある。レベル4は完全自動運転(ドライバー不要)だが、大雨や霧などの極端な環境は対象外だ。あらゆる状況での完全な自動運転が夢のレベル5となる。テスラは基本的にはレベル3だ。ウェイモは好天時のフェニックスではレベル4を目指している。テスト走行は今後も続く。

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 だから私たちは待つのだ。州間幹線道路を走行する自動運転トラックは、乗用車よりかなり早く意味がある存在になるかもしれない。普通の人にとっては、自動運転車の価格が一般的な車両の5倍ではなく、20%しか割高ではないくらいの水準に下がるまで喜ぶのは早い。それはいつ実現するのだろうか。あえて予想するとすれば、2030年だ。

 テクノロジーというものは通常、一足飛びには進まない。自動運転に必要な多くの個別要素はすでに登場している。ブラインド・スポット・モニタリング(BSM)、自動ブレーキシステム(ABS)、自動駐車などだ。速度制限標識を認識する機能さえある。毎年、新たな機能は高性能モデルから順番に搭載されていくだろう。レベル5の自動運転車はスイッチを切り替えるようにではなく、今後10年をかけて静かに近づいてくるのだ。

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December 25, 2019 at 09:48AM
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