15代目となるS22型クラウンが2018年6月26日に登場して、早1年半。
今回のフルモデルチェンジでクラウンは、デザイン、環境性能、走行性能、安全性能など、クルマとしてのあらゆる性能が刷新され、さらにはクルマ自身が情報をやり取りするコネクティッド技術も充実させた。
最近の販売台数は3800台(2019年9月)と落ち着いてきたものの、発売直後は、約1カ月間で受注台数が3万台にもなった驚異的なクルマである。
この新型クラウンの凄さを歴代クラウンの歴史を振り返りつつ、考察していく。
文:吉川賢一、写真:トヨタ
クラウンの歴史を写真で振り返る
新型クラウンの凄い点 5選
新型クラウンは、走りの質感が欧州車にグッと近づいた。おそらく、エンブレムを隠されてブラインドテストをしたら、欧州車と間違える人も多いだろう。
それだけ完成度が高い。さらに、先進安全技術やコネクティッド技術など、最新装備も整えられ、実に魅力的なクルマとなった。中でも、筆者が凄いと感じている点を5つ挙げる。
1、シャープなボディデザイン
一言でいうとカッコいい。これまでの野暮ったい腰高なシルエットが、新型ではキュツと引き締まり、シェイプになった。
2、運転席からの視界が良い
運転席が低くなり、運転中の安定感が増した。運転席が低くなると、視界が悪くなってしまうのだが、新型クラウンは驚くほどに、視界が良い。
Aピラーが、運転席から細く見えるように設計されているため視界に入りにくく、安全確認がとてもやりやすい。
3、抜群の高速直進性
直進性が非常に高く、クルマ自身がビシッと真っすぐに進んでくれる。真っすぐに突き進むこの運転感覚は、BMWやベンツといった欧州車のレベル。
4、しっとりとした乗り心地
ふわふわと振動が残る乗り心地ではなく、揺れがすぐに収まる。
BMWやベンツの乗り味が好きな方には、丁度良いと感じるが、先代までのロイヤルのイメージで乗り込むとやや硬めと感じる。
5、俊敏なハンドリング
俊敏さと落ち着きを両立した車両の動きが素晴らしい。
足を固めて初期の応答性を上げる従来の方針ではなく、車両重心から見直し、車体剛性やサスペンションの横剛性など、クルマのポテンシャルそのものを上げた運動性能の高さを感じる。
ショックアブソーバーの減衰力を固め、ゴツゴツとしていないのに、しっとりとした落ち着きのある直進性がある。
そしてハンドル操作に対してじわっと曲がるフィーリングが良い。欧州車のフィーリングに近い。
なぜクラウンは売れ続ける?
日本市場自体で、セダンが不人気であることは間違いない。しかしなぜか、クラウンとカローラは、買い続けられている。
10月に登場したカローラは、新車効果もあるため販売台数が絶好調なのは理解できるが、発売後1年半も経っても、未だ月4000台近くが売れ続けるクラウンは、凄いの一言である。
その理由について、この新型クラウンが発売されたころ、とあるトヨタ販売店の営業マンに聞いたことがある。
その営業マンによると、新型クラウンが出たら、とりあえず買ってくれる顧客が、いまだ多くいるそうなのだ。
それは、クラウンならば何もかもが大丈夫という絶対的な信頼関係を、クラウンを売る営業マンが、顧客との間で強固に築いてきた恩恵である。
ただし、気に要らないことがあれば、営業マンは顧客に呼び出され、こんこんと説教をされることもあるらしい。
クラウンが売れ続ける理由は、クルマが魅力的なのはもちろん、それを支える営業マンたちによる努力が成し得た驚異の販売構造にこそ、あるのだ。
ちなみにその営業マンの方に今回のモデルチェンジで顧客の若返りはできましたか? と尋ねたところ、70代が60代後半になりました。と苦笑いで応えてくれた。
ただ、続けて新型クラウンが出るたびに、オプションフル装備のクラウンを買う! と言っていただけるお客様がいるのは、クラウンだけ。若返りと同時に既存顧客も大切にしたいとのことだった。
まとめ
BMW5シリーズやメルセデス・ベンツEクラスをベンチマークにして開発された新型クラウン。
しかし、一番安いクラウンの2.0Lターボモデルは469万円からという価格設定であり、同グレードの輸入車に対して明らかに安い。
国産セダンという安心感、充実した装備もあって、輸入車からの乗り換え需要もあるという。
このまま、国産高級セダンカテゴリにおける、クラウンの独走は続くのだろうか。日産でFR車の新車開発をしていた筆者としては、少し寂しいような気もするが。
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November 27, 2019 at 07:00AM
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