新車販売では激しい販売競争が繰り広げられる車種があるが、このような競合は同じメーカー同士でも起こっている。つまり”共食い”だ。
最近では、新型カローラもハイブリッド車はプリウスと競合しそうな勢いだが、共食いはまだいろいろ存在する。同門だから競合は避けたいが、今はこれらの車種同士が非情にも食い合っている。
今回は、そんな”共食い”事情をチェックをしていく!
※本稿は2019年10月のものです
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年11月26日号
【画像ギャラリー】そのほかにも、このクルマ同士も共食い中!!
■トヨタ/販売チャンネル統合で共食い激化
トヨタのディーラーには系列があり、取り扱い車種も区分されるから、系列同士で共食いが発生する。トヨタの小型/普通車の国内シェアは45%で、昔から「トヨタの敵はトヨタ」と言われた。壮絶な共食いにおびえて他メーカーは近寄れず、トヨタ車の生息しない軽自動車に逃げ込んだ。
共食いの筆頭はアクアとヴィッツHV(ハイブリッド)だ。アクアは2011年にコンパクトなHV専用車として発売され、高い人気を得た。2017年1月にはヴィッツも同じHVを搭載している。2017年のヴィッツの売れゆきは前年に比べて26%増えて、アクアは22%減り、共食いが発生した。
RAV4とハリアーも共食いする。2Lエンジンを搭載するRAV4(4WD・GZパッケージ)と、ハリアー(4WD・プレミアム)が同等の価格になるからだ。RAV4はオフロード指向で、ハリアーはシティ派だが、動力性能や居住性は同程度で競合する。
背の高い1.5Lのコンパクトカーとして、トヨタはポルテ&スペイドを用意する。後席の座面を持ち上げると車内の中央が広い荷室になり、左側のワイドに開くスライドドアから自転車などを積める。この共食い相手は、コンパクトミニバンのシエンタに加わった2列シートのファンベースだ。価格も同程度でシートアレンジは異なるが競争する。
そのほかアルファード&ヴェルファイア、ルーミー&タンクなどの姉妹車も、機能と価格が同じだから共食いを展開している。
■レクサス/FRとFFで同クラス共食い
レクサスは高級車ブランドだから、外観や内装のデザインに共通性を持たせた。ブランドの個性は際立つが、車種ごとの違いはわかりにくい。
特にESとGSは、ボディサイズが近い。GSは後輪駆動だからスポーティな性格で、運転感覚は相応に違うが、ESにも19インチタイヤなどを装着したFスポーツが用意される。
価格は標準仕様の比較でGSが26万円ほど高いが、ユーザーによっては選択に迷って共食いも発生する。発売はGSが2012年、ESは2018年と新しく、後者は共食いになっても勝てる面が多い。
■日産/モデル末期セールで競合が発生
デイズの発売は2019年だが、デイズルークスは2014年と古いため2020年に一新する予定。従って現時点で買うなら、エンジンやプラットフォームが新しく、運転支援機能も備わるデイズの推奨度が高い。
しかし販売店では「デイズルークスを選ぶお客様も多い」という。天井が高いために居住性と積載性が優れ、後席側にはスライドドアが備わり乗降性もいい。モデル末期だから値引きも多く、カーナビを格安で装着できるサービスなどを行う。従って設計が古くても共食いが生じているのだ。
■ホンダ/ベストセラーは共食いを生む
ホンダの販売店では「N-BOXは売れゆきが好調で、同じホンダのフリードから乗り換えるお客様も多い」という。子育てを終えると3列シートミニバンのフリードは不要になるが、高い天井に慣れるとフィットなどでは窮屈に感じる。
そこで軽自動車でも全高が1700mmを上回り、スライドドアも装着するN-BOXに乗り換えるのだ。価格を売れ筋グレード同士で比べると、N-BOXは60万円近く安いが、安全装備などは同等に備わる。 N-BOXは機能や装備のわりに価格が安く、税金も抑えられるからフリードの需要を食っている。
アコードとインサイトは、両車ともにハイブリッドのi-MMDを搭載する。両車とも登録台数は少ないが、インサイトはアコードよりも設計が新しく、価格は約60万円安い。そのために販売店では「アコードからインサイトに乗り換えるお客様が多い」という。アコードは2020年に一新するまで、インサイトに一方的に食われる状態が続く。
■マツダ/CX-30登場で共食い起こる
今のマツダ車はすべて外観が似ていて、メカニズムもSKYACTIV技術で統一した。車種が違っても商品は似ているから共食いしやすい。
SUVでは新型車のCX-30が CX-3とCX-5の間に設定された。2Lエンジンを積んだ2WDの20Sプロアクティブ同士で価格を比べると、CX-3が247万5000円、CX-30は261万2500円、CX-5は285万4500円。
CX-3は後席と荷室が狭く、発売から4年以上を経るから、家族で使うユーザーは約14万円を加えてもCX-30を選ぶ。つまりCX-3は共食いの餌食になる。
CX-5はボディが大幅に拡大する。CX-3とCX-30の全幅は1800mm以下だが、CX-5は1840mmで全長も長い。ディーゼルの排気量は2.2Lだ。CX-30とはニーズが異なる。
CX-5の価格は、2Lエンジン車同士で比べてCX-30よりも約24万円高いが、ミドルサイズSUVを求めるユーザーにはむしろ割安だろう。CX-30とCX-5は共食いが生じるが、比較的共存しやすい。
■スズキ&ダイハツ/スズキとダイハツ、最大の同門競合は?
スズキの共食いは、イグニスとスイフトだ。プラットフォームはイグニスがベーシックで、スイフトは上級タイプを使う。しかし全長はスイフトが140mm長い程度で、エンジンは両車とも1.2Lが主力だから選択に迷う。
価格も装備内容が互角なマイルドハイブリッドのイグニスMZとスイフトMLを比べると、177万円前後でほぼ同額だ。機能的には乗り心地、走行安定性、内装の質はスイフトが優れ、イグニスよりも買い得になる。それでも両車は選択に迷う対象で共食いが生じる。
ダイハツの共食いはタントとムーヴキャンバスだ。販売店では「スライドドアは欲しいが、タントほど高い天井は必要ないと考えるお客様にムーヴキャンバスが好評だ」という。
確かに恐怖の激しい共食いが生じるだろう。ムーヴキャンバスは背が少し低い代わりに外観を丸みのあるデザインに仕上げ、ストライプスと呼ばれるツートンカラーもオシャレだ。
スライドドアを備えた軽自動車ではあるが、実用重視のタントやN-BOXNとは異なる魅力を備える。タント以外では、全高が同程度で横開きドアを備えるムーヴを食うこともあるだろう。
■スバルと三菱はビミューな共食い
スバルは全車が水平対向エンジンを搭載するから共食いも発生しやすい。特にインプレッサスポーツとXVは、共通のボディを使うから迷いが生じる。
WRX S4とレヴォーグの2Lも、両車ともFA20型エンジンを搭載して動力性能が等しい。セダンかワゴンか、という選択で共食いに発展する。
三菱はRVR/エクリプスクロス/アウトランダーの3車が共通のプラットフォームを使ってホイールベースの数値も等しい。エクリプスクロスを中心に共食いが生じる。
パワートレーンの魅力という意味では、デリカD:5のディーゼルとアウトランダーPHEVのプラグインハイブリッドも、両方ともに魅力的で共食いしそうだ。
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November 15, 2019 at 09:00AM
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