臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、事前の世論調査で不利とされていたドナルド・トランプ大統領が、米大統領選挙で激しい追い上げを見せることができた理由について。
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ここまで接戦、いや大激選になるとは米大統領選挙は分わからない。世論調査では民主党候補のジョー・バイデン氏が圧倒的にリードを広げていただけに、大票田であるフロリダ州やテキサス州でトランプ氏が勝利するとは思わなかった。2016年の大統領選挙の際、ヒラリー・クリントン候補が有利と言われていた中、トランプ氏に勝利をもたらしたと言われる“隠れトランプ”も、コロナの影響などで減ったと推測されていたというのに。
情報番組のコメンテーターの話を聞き、新聞やネット記事の解説などを読み、トランプ氏への数々の抗議活動を見れば見るほど、バイデン氏が優勢。だが現役の大統領として、各州でエネルギッシュな演説を続けるトランプ氏の姿をニュースなどで見ると、もしかすると今回もトランプ氏が逆転劇を演じるのではないかと思えた。実際、トランプ氏は猛烈な勢いでバイデン氏との差を縮めていたのだ。
トランプ氏が逆転の可能性を感じさせ、ここまで追い上げることができたのはなぜか。その理由の1つに「単純接触効果」が関係していたのではないだろうか。
「コロナはいつの間にか消えてなくなる」と主張し、マスクの着用を軽視していたトランプ氏の感染が報じられたのは10月2日。入院したもののわずか3日で退院し、復活をアピールした。振り返れば、コロナの感染は、劣勢になっていたトランプ氏にとって危機をチャンスに変える絶好の機会だった。力強いリーダーとして驚異的な回復力を世間に示し、支持者を熱狂させる好材料になったのだ。
さらに、大統領選が近づくにつれ、トランプ氏を目にする機会も増えていた。バイデン氏よりトランプ氏の方が集会を数多く開いて演説していたため、取り上げるメディアも増加した。集会の数だけでなく、張りのある声に大きな身振りや手振り、時には踊り出すトランプ氏の方が映像的には面白い。支持者たちの熱が伝わってくるようなトランプ氏の集会は圧倒的に絵になる。トランプ氏が猛追できたのは、これらを連日報じ続けたメディアの存在が大きいだろう。
単純接触効果とは、同じ対象に何度も繰り返し触れていると、その対象を好ましく感じるという心理的傾向のことを言う。熱烈な支持者たちの様子やタフなトランプ氏の姿を何度も目にすることで、寝ていた隠れトランプを呼び起こす効果があったかもしれない。どちらに投票するか決めかねていた有権者にも、トランプ氏に票を投じるきっかけを作ったかもしれない。
4日までにバイデン氏が獲得した票は、大統領候補として歴代最多の7000万票を超え、「私たちが勝者になると信じています」と述べたバイデン氏。だが、どちらが大統領になっても互いの支持者は対立し、分断してしまった米国の溝はさらに深くなるだろう。不快で悪いイメージしかない対象に繰り返し触れれば、それだけ嫌悪感や反感が増す。ここにも、単純接触効果が関わっているようだ。次の4年、米国にはどんな未来が待っているのだろうか。
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